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journalism mania

ジャーナリズムを研究している者の備忘録です

メディア環境が変わると、ジャーナリズムのあり方も変わる

今さら言うまでもなく、日本人を取り巻くメディア環境は大きく変わりつつあります。その中でジャーナリズムのあり方も変化を遂げているのではないかな――と思っていたところ、次の記事を読みました。

 

dentsu-ho.com

 

内容をざっくりまとめると、「メディア環境の変化によって情報コントロールの主導権がユーザーに移り、彼らと関係のある文脈でコンテンツを作る力が求められてきているよね」っていう話です。メディア関係者ならば、うんうんと頷けるでしょう。

 

ジャーナリズムに話を限ると、「ユーザーに寄り添う」という視点が今まで欠けていたのではないかと思うのですよね。もともと、一般市民に代わって司法・立法・行政などの権力を監視し、民主主義を護るという役割を担っていたはずなのに、「自分たちが社会の木鐸じゃあ!」という意識が強すぎて、受け手不在のまま作られてきた……というか。

 

Webメディアの場合、マスメディアと違って、それでは立ち行きません。元来、ユーザーに選ばれた情報だけが消費されるメディアです。ことに、上記の記事でも指摘されているように、次のような環境の変化によって、さらにユーザーの文脈を踏まえたコンテンツ展開が重要になってきています。

(1)スマートフォンの普及

(2)SNS中心の生活

(3)キュレーションメディアの台頭

(4)検索行動の変化

(5)オンライン動画閲覧数の増加

 

「ジャーナリズム」に限った話をするとしたら、記事の中でも指摘されているように分散型で展開することも必要でしょうが、何よりもユーザーの問題意識に沿ったコンテンツの提供も求められてくると思います。

 

私が注目しているのは、解説型メディアの一つである「弁護士ドットコムニュース」です。

 

www.bengo4.com

 

弁護士ドットコムニュースでは、読者にとって身近な問題、そしてニュースで話題になっているトピックを取り上げ、法律的に考えるとどうなるのかを弁護士の見解を交えて解説しています。これは、まさにユーザーの文脈に沿ったニュースですよね。

 

私はジャーナリズム系Webメディアに求められるのは速報性ではないと思っています。大きなニュースを一次情報から取ってきて配信できるのは、それなりの資本と記者ネットワークを持っているマスメディアと彼らが運営しているWebメディアです。少数で運営しているジャーナリズム系Webメディアでは、異なる切り口で勝負するしかありません。

 

「マスメディアのストレートニュースを受け、別の切り口からユーザー視点の記事を作る」という意味で言うと、弁護士ドットコムニュースはお手本のような存在ですが、ハフィントンポストやバズフィードも気を吐いています。

 

加えて、ジャーナリズム系Webメディアでは、検証可能性も要求されるようになってくるのではないかと思っています。従来のマスメディアでは、取材過程はブラックボックスの中に閉じ込められ、記者が書いた記事が読者に提示されて終わりでした。しかし、Webでニュースを消費するユーザーたちは、少し疑わしい情報があると、「ソースはどこ?」と聞くのが常です。こうしたメディア・リテラシーの高い人々は、書き起こしサイトの「ログミー」や動画サイトの「YouTube」「ニコニコ動画」、そして各種公的機関のWebサイトで噂を検証します。

 

「生データ」が重視されるようになっている現在、データを分析・可視化し、そこから新たな意味を浮かび上がらせるという「データ・ドリブン・ジャーナリズム」は、もとになったデータを読者が検証できるようにしているという意味で、伸びしろがあるのではないかな、と思います。

 

さらに、ジャーナリズム系Webメディアでは、リアルタイム性も重視されていると思います。これは速報性とは似て非なるものです。選挙戦やトルコのクーデターなど、多くの人が興味を持っているニュースの動向をリアルタイムで更新していく。テレビはともかく、新聞にはこれができません。そういう意味では、NHKなどが実践している「ライブブログ」はもっと注目されてもよいでしょう。

 

分散型メディアの話からだいぶ逸れてしまいました……。結論から言うと、タイトルどおり「メディア環境が変わると、ジャーナリズムのあり方も変わる」。ジャーナリズム系Webメディアは、よりユーザーに寄り添ったかたちで、これからも進化を遂げていくでしょう。今後が楽しみです。